経営と発信の「地図」が一冊で手に入る
小山竜央『非常識なマーケティング大全』
「非常識なマーケティング」
このタイトルを見て、誰も知らない裏ワザが書いてあると期待した人もいるかもしれません。
先に言っておくと、この本に一発逆転の必殺技は載っていません。
では読む価値がないのかというと、話は逆です。
小山竜央さんの『たった1日で儲かる社長に生まれ変わる 非常識なマーケティング大全』が渡してくれるのは、経営と発信の全体を見渡す「地図」です。
集客、顧客理解、差別化、DRM、ブランディング、ネーミング、コピーライティング。内容は広く、ひとつひとつは浅め。しかし、間違ったことはほとんど書かれていません。
マーケティングをある程度勉強してきた人なら、知らない話ばかりではないでしょう。それでも、「自分はどこが抜けているのか」を一冊で点検できる。
ここに、この本の価値があります。
良い商品を作れば売れる、は幻想である
本書の出発点は明快です。
ビジネスには、集客・販売・商品やサービス・運営という4つの要素がある。そのなかでも、まず集客がなければ何も始まりません。
どれほど良い商品でも、存在を知られなければ売れない。
安くすれば売れるとも限らない。お客様が買っているのは、商品の性能そのものではなく、それによって得られる「良い未来」や「良い変化」だからです。
これは、記事やメンバーシップも同じです。
「良い記事を書けば読まれる」
「安くすれば入会してもらえる」
そう考えたくなりますが、現実は違います。
誰の、どんな悩みを解決するのか。その人の生活がどう変わるのか。なぜ自分から買う必要があるのか。そこまで伝わって、初めて商品になります。
本書では、売る前に「教育」が必要だと説明されています。
教育というと上から目線に聞こえますが、要するに、商品の価値に気づいてもらうことです。一度紹介しただけで売れないと嘆くのではなく、切り口を変え、わかりやすく、何度も伝える。
販売とは、投稿一発で決める勝負ではありません。
一番刺さったのは「DRM+回遊性」だった
この本を読んで、私が最も引っかかった言葉は「DRM+回遊性」でした。
DRMとは、見込み客と直接つながり、段階的に商品を提案していく仕組みです。
たとえば、
無料または低価格の商品で知ってもらう
中価格の商品で価値を体験してもらう
本命の商品へ進んでもらう
ここまでは、昔からある考え方です。
しかし今は、メールアドレスを集めて高額商品へ誘導するだけでは弱い。
一度買って終わりではなく、商品やコンテンツの間を行き来してもらう「回遊性」が必要になります。
無料記事を読む。ライブを見る。過去記事を読む。ニュースレターを受け取る。有料記事を買う。メンバーシップに参加する。そして、また新しい無料記事へ戻ってくる。
一直線の販売導線ではなく、読者が自分の意思で回り続ける場所を作るわけです。
本書には、この回遊性を具体的にどう実現するかまでは詳しく書かれていません。そこは正直、物足りませんでした。
ところが本を読み終えたあと、気づきました。
「これ、Substackそのものじゃないか」
記事、Notes、ライブ、メール配信、アーカイブ、有料購読。読者との接点が一か所にまとまり、読者がコンテンツの間を回遊できる。
私はSubstackを使ってきましたが、本書を読むことで、なぜこの場所に可能性を感じていたのかを、自分の言葉で説明できるようになりました。
本から得られる価値は、新しい知識だけではありません。
自分が感覚的にやっていたことの構造が見える。それも、読書の大きな効用です。
AI時代ほどマーケター本人の判断力が必要になる
後半では、ブランディング、購入の後押し、ネーミング、コピーライティングなどが扱われています。
お客様の声を集める。購入前の不安をQ&Aで消す。難しい言葉を使わず、得られる変化が伝わる名前をつける。売れているコピーを繰り返し音読する。
どれも派手ではありませんが、売るためには必要なことです。
特に印象に残ったのは、コピーライティングの前に読解力が必要だという話でした。
AIは、AIDA、PASONA、QUESTなど、有名な文章の型をほとんど知っています。「この商品を売るセールスレターを書いて」と頼めば、それらしい文章はすぐに出してくれます。
しかし、その文章が本当にお客様の心を動かすかどうかは、AIではなく人間が判断しなければなりません。
相手は何に困っているのか。どの言葉なら伝わるのか。どこが嘘くさいのか。どの一文で読むのをやめるのか。
これを見抜く力がなければ、AIが何本書いても「それっぽい文章」が増えるだけです。
AI時代にコピーライティングが不要になるのではありません。
書く作業の一部をAIに渡せるからこそ、読む力と選ぶ力の差が、以前より大きくなるのです。
すべてに賛成したわけではない
本書では、新しいSNSにはすぐ飛びつかず、しばらく様子を見るという考え方も紹介されています。
私は、ここには賛成しません。
新しいプラットフォームは、まだ強者が固まっていない初期ほど伸びやすい。自分に合うかどうかは、外から眺めていてもわかりません。
大金を突っ込む必要はありませんが、小さく試すべきです。
Substackも、様子を見続けていたら今の蓄積はありませんでした。仮説を立て、小さく始め、違ったら修正する。この姿勢のほうが、変化の速い時代には合っています。
本に書いてあることを全部信じる必要はありません。
賛成できる部分と、違和感を覚える部分を分ける。その違和感から、自分の考えが見えてきます。
この本をおすすめしたい人
本書が向いているのは、次のような人です。
マーケティングを何から学べばいいかわからない人
SNSで発信しているが、商品への導線が作れていない人
良い商品なのに売れないと悩んでいる人
集客、差別化、ブランディングを一度整理したい人
一人で商売をしている個人クリエイター
反対に、ひとつの施策を深く学びたい上級者には、少し物足りないでしょう。具体的な広告運用や販売導線を、そのまま真似できる形で欲しい人にも向きません。
まとめ
広く浅く、今風にまとめられたマーケティングの入門書。これが、読み終えた私の結論です。
驚くような秘密はありませんでした。
それでも、「商品を売って終わりではなく、読者が回り続ける場所を作る」という視点を得ただけで、私は元を取れました。
良い本とは、知らないことが100個書いてある本だけではありません。すでに始めていることの意味を理解させ、次の一手を明確にしてくれる本も、良い本です。
そして私は、この本を読んだ結果、ますますSubstackを続ける理由がはっきりしました。
この記事も、読者が回り続ける場所の一部となってくれるはずです。
よしだ健康のマーケティングを学ぶ


ご紹介ありがとうございます😊
以前受けていたコンサルがこの方のコンサルを受けていました。