現在、Kindle本を作っています。
本の冒頭に置かれる文章の一つが、まえがきです。
今回は、実用書のまえがきについて書きます。
私は、今回も「まえがき」を一番最後に書くことにしました。しかも、ここだけは完全に自分で書きます。
少し逆さまに見えるかもしれません。
最初に読まれる文章なら、最初に用意したほうが自然です。テーマを決めた勢いのまま、「この本では何を伝えたいか」を書くこともできます。
それでも、本文と全体構成が完成してから書きます。
理由は、まえがきが挨拶ではなく、セールスレターだからです。
まえがきが売るのは、本ではない
セールスレターというと、本を買ってもらうための販売ページを想像します。
しかし、まえがきを読んでいる人は、すでに本を開いています。
購入した人かもしれない。試し読みをしている人かもしれない。誰かに勧められ、ひとまず最初の数ページを見ている人かもしれません。
まえがきが売るのは、本そのものではありません。
次のページへ進む理由です。
ここを勘違いすると、まえがきが著者の挨拶だけになります。
本を手に取っていただき、ありがとうございます。
この本を書くのには苦労しました。
長い時間をかけて、ようやく完成しました。
どれも書いてはいけない話ではありません。
ただ、読者が知りたいことより先に著者の事情が続けば、「自分のための本なのか」が見えなくなります。
本文の内容を順番に要約するだけでも弱い。
目次を文章に直しただけでは、情報は分かっても、読み進める理由までは生まれません。
まえがきで必要なのは、著者の熱意を大きく見せることではない。
この先を読むことで、自分に何が起きるのかを、読者が判断できるようにすることです。
読者が最初に抱く四つの疑問
まえがきで答えたい疑問は、四つあります。
一つ目は、「これは誰に向けた本なのか」です。
初心者向けなのか。経験者向けなのか。どんな場面で困っている人に向けたものなのか。
「すべての人に役立ちます」と広げるほど、読者は自分との関係を見つけにくくなります。
二つ目は、「読むと何を得られるのか」です。
知識が増えるのか。ものの見方が変わるのか。具体的な手順を使えるようになるのか。
ここでは、得られるものだけでなく、約束しない範囲も見せたほうがいい。
一冊読めば必ず成功する。
誰でもすぐ結果が出る。
人生の問題がすべて解決する。
そんなことまで約束すれば、入口は強く見えます。しかし、本文が期待に応えられなければ、読み進めるほど信用を失います。
三つ目は、「なぜ、この著者の話を信じられるのか」です。
必要なのは、立派な肩書を並べることだけではありません。
なぜこのテーマを書こうとしたのか。どんな経験から、その考えにたどり着いたのか。どこまで実際に試してきたのか。
私は作家とコピーライターの両方をやってきました。
だから、物語として読ませることと、読者に行動してもらうことの両方から、まえがきを見る癖があります。
それでも、肩書だけで本文の正しさが保証されるわけではありません。信頼は、経験と本の内容がつながったときに生まれます。
四つ目は、「この先をどう読めばいいのか」です。
最初から順に読む本なのか。必要な章から使えるのか。読みながら何かを書いたり、試したりする本なのか。
読み方が分かれば、読者は次のページへ進みやすくなります。
誰向けか。
何を得られるか。
なぜ信じられるか。
次にどう読むか。
まえがきは、この四つへ短く答える場所です。
先に書くと、約束が中身を追い越す
本文より先にまえがきを書くと、著者はまだ存在しない本について約束することになります。
書き始めた時点では、入れるつもりだった話が、途中で不要になることがあります。
反対に、書いているうちに重要なテーマが見つかり、全体の中心が動くこともあります。
先に書いたまえがきをそのまま残せば、入口で案内した本と、実際に完成した本がずれます。
「この本では、ここまで分かります」と書いてあるのに、本文では十分に扱っていない。
「この順番で進みます」と案内したのに、構成を変えたあとも説明だけが古い。
それでは、まえがきが立派であるほど逆効果です。
コピーライティングは、強い言葉を作る仕事だと思われがちです。
私が二十年ほど関わってきて感じるのは、約束と商品を一致させる仕事だということです。
本文が完成していれば、何を約束できるかが分かります。
同時に、何は約束できないかも分かります。
だから、最初に置く文章を最後に書く。
入口を弱くするためではありません。入口の約束を、中身と一致させるためです。
AIの文章を、本文と照らし合わせる
AIにまえがきの下書きを頼むこと自体は否定しません。
テーマや目次を渡せば、読者への呼びかけや、得られるものを整理した自然な文章を作れます。
しかし、自然な文章であることと、本文に裏づけられた約束であることは別です。
本文にない価値を約束していないか。著者の経験を大きく見せていないか。案内した読み方が、本の構成と合っているか。
AIの下書きを完成した本文と照らし合わせ、最終確認をするのは著者です。
まえがきは、本の最初に置く文章です。
だからこそ、最後に書く。
もし今度、自分で本を書く機会があるならば、自分のまえがきを開き、
「誰向けか」「何を得られるか」「なぜ信じられるか」「次にどう読むか」
この四つの問いへ、それぞれ一文で答えられるか点検してみてください。



substackやnoteの記事のリード文も基本的には同じですか?
常に次の文章、次の見出しを読んでもらえるように書くとか言われますが。
いつも学びをありがとうございます✨