この本は、文章術の本ではありません。
Substackを書く人にとっては、「何を書くか」より先に、「自分はどこに引っかかったのか」を取り戻すための本です。
今回読んだのは、大島育宙(おおしま・やすおき)さんの『なぜあなたの感想はふつうなのか 独自の視点で語る技術』。
Amazonの紹介では、発売1週間で2万部突破。オードリー若林正恭さん、元テレビ東京プロデューサー佐久間宣行さんも推薦。映画の本カテゴリでベストセラー1位とも出ていました。
ただ、売れているから紹介したいわけではありません。
この本が扱っているテーマが、いまSubstackで書いている人にかなり必要なものだったからです。
感想をどう書くか。
自分の視点をどう作るか。
他人と同じ話にならないために、何を見るべきか。
ここが、かなり具体的に書かれていました。
▲書店でも絶賛展開中でした!
他人の感想を見てはいけない、ではない
この本でまず面白かったのが、「感想検索病」という言葉です。
映画を観たあと。
本を読んだあと。
ドラマを観たあと。
自分がどう感じたかを考える前に、ついレビューやSNSの反応を見に行ってしまう。誰かが自分のモヤモヤをうまく言葉にしてくれていないか、探してしまう。
これは普通にあります。
でも、この本は「他人の感想を見るな」とは言っていません。むしろ、他人の感想は見たほうがいい、という立場です。
ここがいい。
問題は、他人の感想を見ることではありません。問題は、それを自分の感想の代わりにしてしまうことです。
他人のレビューを読んで、「そうそう、自分もそれが言いたかった」と安心する。そこで止まると、自分の感想は出てきません。
読む
比べる
ズレを見つける
この順番が大事です。
「自分も同じだ」と思ったところ。
「そこは違う」と思ったところ。
「みんなはそこを見ているけど、自分は別の場所が気になる」と思ったところ。
その差分が、自分の視点になります。
Substackでは、違和感を流した瞬間に普通になる
この本をSubstack向けに読むなら、いちばん使えるのは「違和感を膨らませる」という考え方です。
何かを読んだときに、少しだけ引っかかることがあります。
そこ、そんなに褒めるところかな?
自分はむしろ別の場所が気になった。
この言い方、少し雑じゃないか。
みんなが同じ感想を言っているけど、本当にそうか?
この小さな引っかかり。
ここを流すと、文章は普通になります。
「勉強になりました」
「わかりやすかったです」
「刺さりました」
「おすすめです」
もちろん、悪くはありません。でも、それだけだと記事にはなりにくい。誰が書いても同じ文章になるからです。
Substackで読まれるのは、情報そのものだけではありません。
この人は、どこに引っかかったのか。
この人は、なぜそこを大事だと見たのか。
この人は、他の人とどこが違うのか。
そこに価値が出ます。
だから、違和感は捨てないほうがいい。むしろ、記事の入口にしたほうがいい。
たとえば今回の本なら、普通に紹介すると「感想を書く技術の本です」で終わります。
でも、私の引っかかりはそこではありませんでした。
この本は、感想を語るの本に見えて、実はSubstack運用の本として読める。
ここです。
Substackは、自分の視点を読み続けてもらう場所です。だから、感想が普通になる問題は、そのまま発信が普通になる問題につながります。
レビューを見てわかった、この本の重さ
今回、この本について書かれたレビューもいくつか見ました。
noteの書評では、この本は単なる感想術ではなく、「作品を語るとは何か」「感想と批評を分けるものは何か」を考えさせる本として紹介されていました。
特に印象に残ったのは、ありきたりな感想しか出てこない理由を、作品の見方が浅いからではなく、「自分自身を十分に理解できていないから」と整理していた点です。
これはかなり本質です。
感想を書く力は、語彙の多さだけではありません。
自分は何に反応するのか。
何に怒るのか。
何に救われるのか。
何を退屈だと感じるのか。
何に、つい口を出したくなるのか。
そこが見えていないと、感想は借り物になります。
Amazonのレビューにも、面白い声がありました。
「自分の言葉を見つけるための本」と評価しつつ、後半のインプット術や読書会、創作会はハードルが高い、という反応です。
これは一部は当たっています。
この本は、読むだけで明日から誰でも独自の感想が書ける、という軽いノウハウ本ではありません。
むしろ、独自の視点で語るには、それなりに読んで、見て、比べて、考える必要があると突きつけてきます。
楽ではない。
でも、そこがいい。
Substackで書き続けるなら、楽に書けるネタだけでは足りません。自分の視点を鍛える作業が必要になります。
この本は、その作業をかなり具体的に見せてくれる本でした。
書く前に、まず読みに行く
Substackでは、自分が投稿することばかり考えがちです。
でも、伸びる人はだいたい読んでいます。
他の人が何を書いているのか?
どんな投稿に反応が集まっているのか?
いまタイムラインにどんな空気があるのか?
どの言葉が使われすぎているのか?
ここを見ています。
これは迎合するためではありません。自分の立ち位置を確認するためです。
場を見ないまま書くと、発信は独り言になります。逆に、他人の投稿を読んでから書くと、自分のズレが見つかります。
みんなはこの論点で語っている。
でも、自分は少し違う角度で見ている。
この部分は、まだ誰も書いていない。
この状態になると、記事が書きやすくなります。
読むことは、ネタ探しではありません。
自分の切り口を見つける作業です。
テンプレ感想に出会ったら、少しずらす
本書では、テンプレ感想に出会ったらチャンスだ、という話が出てきます。
これもSubstackでそのまま使えます。
たとえば、みんなが同じように言っている言葉があります。
「Substackはニュースレターが強い」
「noteより濃い読者が集まりやすい」
「有料化に向いている」
「コミュニティ作りに使える」
どれも一部は当たっています。
でも、そのまま書くと普通になります。
だから、少しずらす。
本当に強いのはニュースレター機能なのか。
むしろ、読者との距離感ではないか。
noteとの違いは機能ではなく、読む空気にあるのではないか。
有料化より先に、まず無料読者との関係を作るほうが大事ではないか。
この「少しずらす」が記事になります。
みんなが言っていることを否定する必要はありません。ただ、そのまま繰り返さない。
同じテーマでも、角度が変われば別の記事になります。
自分だけの「警察」を見つける
本書には、自分だけの「警察」を見つけよう、という話も出てきます。
何かを見るたびに、どうしても気になってしまうポイント。
これはかなり大事です。
たとえば私なら、発信を見るときに、こういうところが気になります。
読者導線が切れていないか。
無料記事と有料記事の役割が曖昧ではないか。
プロフィールを見て、初見の人が何者かわかるか。
その投稿は、誰に向けて書いているのか。
記事の最後で、読者にどんな行動を促しているの?
こういうところに目が行きます。
職業病です。
でも、この職業病が切り口になります。
文章の言い回しが気になる人。
デザインの余白が気になる人。
値付けが気になる人。
人間関係の温度感が気になる人。
お金の流れが気になる人。
企画の立て方が気になる人。
それぞれに、自分だけの「警察」があります。
それを隠す必要はありません。
むしろ、その視点で書く。すると、ただの感想が記事になります。
独自の感想は、ゼロからは出てこない
独自の感想は、何もないところから突然湧いてくるものではありません。
だいたい比較から出てきます。
他人の感想と、自分の感想を比べる。
過去の作品と、今回の作品を比べる。
昔の自分と、今の自分を比べる。
Aというサービスと、Bというサービスを比べる。
一般的な見方と、自分の違和感を比べる。
その差分に、自分の視点が出ます。
だから、「自分らしい記事を書きたい」と思うなら、自分の内側だけを掘っていても足りません。
外を見る。
読みに行く。
比べる。
違和感を拾う。
名前をつける。
記事にする。
この順番です。
Substackで書く人ほど、もっと読みに行ったほうがいい。
これはかなり大事な話です。
この本は、発信者の筋トレ本として読む
『なぜあなたの感想はふつうなのか』は、感想をうまく書くための本です。
でも、私はそれ以上に、発信者の筋トレ本として読むのがいいと感じました。
きれいな文章を書くためではありません。
うまくまとめるためでもありません。
読者に褒められる感想を書くためでもありません。
自分が何に引っかかる人間なのかを知るための本。
ここに価値があります。
Substackでは、ただ情報を流すだけでは弱い。情報そのものは、検索でもAIでも出てきます。
でも、その人の視点は、その人からしか出てきません。
この人は、なぜそこを見るのか。
この人は、なぜそこに違和感を持つのか。
この人は、なぜその順番で考えるのか。
そこを読みたくて、読者は戻ってきます。
だから、普通の感想から抜け出すことは、そのままSubstackの文章を強くすることにつながります。
まとめ
この本は、Substackを書く人に向いています。
理由はシンプルです。
Substackで必要なのは、情報量だけではありません。自分の視点で語る力です。
他人の感想を見てもいい。
むしろ見たほうがいい。
でも、そこで安心しない。
自分はどこが違うのか。
何に引っかかったのか。
どの切り口なら、自分の言葉で書けるのか。
そこまで見る。
感想が普通になる人は、たいてい違和感を流しています。
逆に、違和感を拾える人は、同じ本を読んでも、同じ映画を観ても、違う記事を書けます。
Substackで書くなら、もっと読みに行く。
もっと比べる。
もっと違和感を残す。
この本は、そのためのいい教材でした。
気になる方は、ぜひ読んでみてください。私のプロフィールリンクにもAmazonリンクを貼っておきます。









